マウンティング用語の基礎知識

か行

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外資系

外国からの出資を受ける日本の企業。外資系企業に勤めることは、田舎者根性に塗れたあらゆる日本国民を嘲笑する権利を手にすることを意味する。
日本の古い慣習に囚われない風通しのよい職場、自由な発想が尊重される企業風土、実力主義の評価システムなどが共通したイメージとして普及している。
職業マウンティングにおける最強カードの一角であり、当然入社できるのは幼少期に祖父からヴェルタースオリジナルを与えられていた人間だけである。

学生気分

社会人になって日が浅く、責任感や職務意識が十分に定着していない状態を表す言葉。
多くの場合、適応過程にある新卒者の不安や疚しさにつけ込み、都合のいい搾取対象として洗脳することを目的に用いられる。

学歴

出身大学や高校など、それまで所属してきた教育機関の履歴。生育環境や挫折体験など、個々人の成長過程における内的経験と深く結びついていることから、実社会において明言することはタブー視されている。そのため高学歴を誇りたい者たちは、オブラートに包みながら自身の学歴を示唆する術を見出すことに腐心する。「本郷のキャンパス」など、地名で匂わす方法が一般的である。

風通し

職場において、上下関係などを気にせず発言できる環境を表す比喩。ベンチャー企業などで好んで用いられるが、多くの場合、組織としての体制・構造が何か優れているわけではなく、単にメンバー間の年齢や立場が近いだけである。その代償として、労務管理などコンプライアンス面が穴だらけのまま放置され、すきま風が吹きすさんでいるケースもしばしばだ。

家族

婚姻関係や血縁関係などの繋がりにより、生活を共にしたり、儀礼の場を共にしたりする集団を指すが、「どこまでが家族か」については明確に区分しえない。そのため職場やプライベートなコミュニティにおいても、メンバー同士の関係を「家族」と類比的に捉えるケースも多く存在する。とくにビジネス上の関係を家族的なものとして見なそうとする者は、「家族の絆」という言葉のもと不可避的な拘束と奉仕を強いる意図にあふれていることがほとんどであり、早急にそこから脱出する策を講じる必要がある。搾取を正当化する類義語として「アットホームな職場」がある。

ガチる

本気を出すこと。片付けなければならない仕事が溜まってきた時などに、精神的に追い込まれていないことをアピールするため「ガチれば余裕」といった形で用いられる。しかし、実際に本気が出されるケースは金利よりも低いため、余裕を持って事態に対処できることはほとんどない。つまり実質的に、「ガチれば余裕」は「結構ヤバいが今は考えないようにしている」という意味である。

考えさせられる

なんらかの表現・作品に対する肯定的な評価。この感想を口にした人間が実際に具体的な思考を展開する例は絶無であり、事実上SNSの「いいね」と同義である。一方で、あたかも社会的・道徳的な審美眼で対象を評価しているかのような雰囲気を醸し出せるため、具体的な感想は思いつかないが、自身がその表現の理想的受容者であることをアピールする際に用いられる。

帰国子女

親の仕事の都合などにより、一定期間海外で生活し、その後国内に戻ってきた子ども。海外での居住経験を鼻にかけ、日本文化を見下す存在として表象されることが多いが、このイメージは単なるステレオタイプである。
むしろ海外生活が長いほど、海外における人種差別やスクールカーストといった負の側面に触れる機会も増え、同時に日本語に対する苦手意識も強くなるためか、自らが帰国子女であることを積極的に開示しない傾向が見られる。大抵の場合、海外経験をひけらかすのは「お客様」としてその国のポジティブな側面しか認識していない短期留学者である。

クリエイティブ

創造的であるさま。転じて、広告などの制作陣、あるいは制作物そのものを指す。
何もないところから独創性を発揮し、人を魅了するような作品を創り出す様子を表す言葉だが、そのイメージを利用し自身の仕事の特権性を誇示したり、あるいは劣悪な労働環境を自ら肯定する際の拠り所としての機能も果たす。

濃いメンツ

個性的なキャラクターが揃った集団。SNSの投稿において、自身の人脈がいかに強力であるかをアピールする際に「濃いメンツで飲んだ」といった形で用いられる。なお、実際にそれが個性的な集団であるケースは1割に満たない。多くの場合、彼らの「個性」は内輪で認め合っているだけのものであり、傍から見れば何の変哲もない飲み会である。

ここが私のアナザースカイ

「私はこの場所で祖父からヴェルタース・オリジナルを与えられた」の意。

こどおじ

「子ども部屋おじさん」の略。実家を出ることなく、かつての子ども部屋をそのまま自室として利用している中年以降の男性を指している。「引きこもり」や「ニート」を連想させる言葉だが、「こどおじ」には就労している者も含まれる。「パラサイト・シングル」とはほぼ同義であるが、「子ども部屋」と「おじさん」とのグロテスクなギャップが強調されているがゆえに、強力な人格否定効果を発揮する。そのため現実においては使用禁止カードとされている。
実際のところ、経済的合理性を考えれば実家暮らしは妥当な選択肢であり、実家に住み続ける理由として介護問題を抱えていたりする場合もあるのだが、ともあれ「親と暮らしていること」が「人間として自立していないことの証」と見なされる風潮のなかでは、正論を訴えても聞く耳を持たれないようである。というよりも、「子ども部屋おじさん」の語感が強すぎるがゆえに、人々の「他人をおちょくりたい欲求」「他人を一括して否定したい欲求」にドハマりしてしまった感がある。

こなれ感

こなれた感じ。「こなれる」は知識や技術を自分のものとして身につけている様を表す。
転じて、「飾らない自分」を演出するファッションスタイルを指す。当然、まったく飾らない状態では人には見せられないため、こなれ感を演出するには相応に飾り立てる必要がある。

コミット

ある立場に傾倒したり、特定の事業などに注力すること。主にビジネスシーンにおいて、「もっと会社のために貢献しろ」という意を伝える際に用いられる。「頑張る」「努力する」と指す内容は同じだが、根性論・精神論のニュアンスを隠せる便利な言葉として濫用される。
契約時など、サービスを提供する側が「精一杯コミットさせていただきます」「フルコミットいたします」などと言ったとしても、それは小学生の「いっしょうけんめいがんばります」と同義であるため、具体的内実を期待してはいけない。
なお、「コミット」と検索した際に上位表示されるサイトの多くは「コミットはコミットメントの略語」という意味不明な説明を行っている。動詞であるcommitの名詞形がcommitmentなのだが、なぜか元の語が略語扱いされてしまっている。commitをネット辞書で調べると一番上に「(犯罪などを)犯す」という意味が出てくるので、最初に書いた者が「日本語の意味とは違う」と勘違いしてしまったのかもしれない。事実関係を検証せず、他サイトの記述をそのまま使い回した粗悪なリライト記事がいかに多いかを教えてくれる単語ともなっている。

コミュ力

「コミュニケーション能力」の略。相手と円滑に、意思疎通や合意形成のプロセスを進めていける力。社会生活を送るうえで最も重要な資質とされ、これを欠いたものは社会不適合の烙印を押される。
とりわけ就活市場における「コミュ力崇拝」は著しい。が、多くの場合求められているのは、「他者との議論を通じて合理的解決を見出していく力」などではなく、「権力に迎合しながら反乱分子を体よく収める能力」すなわち「権力者の主観を組織の方針としてふんわり正当化する力」である。

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