マウンティング用語の基礎知識

さ行

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サバサバ

物事に拘泥することなく、さっぱりしている様子。人間関係をめぐる厄介ごとに囚われない気質を表す際に用いられることが多い。なお、自らの性格を「サバサバ系」と表現する際には、「他者への関心の薄さ」を周囲に知らしめる目的がある。「自分の言動に対するお前らの反論は一切受け付けない」という強い宣告である。
このような傾向から、「自称サバサバ系は自己愛がひときわ強く、他者を横暴に扱うことに抵抗がないため、関わってはいけない」ということが通説となっている。

地頭(じあたま)

学歴や学力試験など、目に見えるものとしては表れない頭のよさ。教育課程において蓄積される知識とは異なる観点から評価され、状況判断の能力や洞察力、対応の柔軟性などさまざまな尺度が適用される。
その人物の評価基準として「地頭」が持ち出される際には、つねに知識蓄積型の「秀才タイプ」を軽蔑するニュアンスが含まれている。学校教育を通じて形成された「人工的な能力」ではなく、自然に獲得した能力こそが、その人の「本来の能力」だというわけである。
なお、「地頭」を構成する性質については統一的な見解はなく、場面や文脈に応じてさまざまな「地頭」の概念が導入されている。評価者の主観的認識の枠組みを超えて「頭のよさ」を判定することはできないがゆえに、つねに「地頭」は「自分から見て頭がいい人の特性」ないしは「自分の思考様式における特性」という基準から決定される。そのため、各々の自己認識のうえでは、地頭の悪い人間は存在しない。

ジェネレーションギャップ

世代間格差。世代が上の者が下の者に対し、「え!?○○知らない?っかぁ~これがジェネレーションギャップかぁ~」と大仰に振る舞う形が正式な用法であり、実際に9割近くはこの文脈で用いられる。「若者の○○離れ」と同様、変化に対応できなくなった人間が、現状の自分の価値観を肯定することを目的に用いる言葉であり、何か具体的な意味を持っているわけではない。

塩化ナトリウム(NaCl)を主成分とする調味料。もっぱら素材本来の味を楽しむために用いられる。

○○しか勝たん

“I like ○○ very much.” の意。

自覚

自らが置かれた立場に対し、社会的に要請される役割意識を抱くこと。「社会人としての自覚」「父親としての自覚」など、立ち位置の変化とともに自己認識のありようを改めていくことが求められる。
実際に使用される文脈としては、職場で新卒者に対して浴びせられる「もっと社会人としての自覚を持ってもらわないと」というケースがほとんどである。なお、「社会人としてあるべき自己認識」がどのようなものであるかについては誰一人として明確に定義づけることはできず、またセルフイメージはつねに現実とズレてしまうものであるから、「自分が○○としての自覚を持てているかどうか」は人間の理性では確認することができない。
そのため誰もが「自分が自覚を持てているか」について何らかの負い目を抱えていることになる。「自覚」のこのような性質は上の立場にいる者にとって、気に入らないポイントを指摘する際にとりわけ有効に機能する。相手の過ちの根拠を「自覚」という不定の負い目に帰することにより、恣意的な言いがかりに正当性を持たせることができるわけである。
ここで望ましい自覚のありようについて尋ねてみても、「大人なんだから自分で考えろ」式の答えが返ってくるため、今度は「大人としての自覚」について考えなくてはならなくなる。

自己分析

自分自身の能力や特性について、客観的に考察し整理すること。就職活動において、企業に自身の強みをアピールするために必須の作業とされており、これを契機に「自分は何者であるか」とアイデンティティの危機に陥ってしまう者も少なくない。
実際のところ、企業が求めているのは「アピールポイントに対して適切な背景や理由を提示しながら、説明を展開できるプロモーション能力」であり、求職者が何者であるのかはさしたる問題ではない。間違っても、根拠のわからない「性格診断」の類いに手を出し、一喜一憂したりしてはいけない。

師匠

学問や芸術、職能などを教える者。落語や相撲など、伝統的な芸事や競技においては、権威ある人物の門下に入り、師弟関係を結ぶことがキャリアのスタートとなる。それは一種の「契り」であり、師匠による指導と、弟子による報いとしての身の回りの世話が分かちがたく結びつき、血縁よりも濃密な関係性が築かれるとされる。
少年ジャンプをはじめとする英雄譚においても、師弟関係を通じた主人公の成長は物語の重要な構成要素となっており、「理想の師」への憧憬は広く共有される意識だと言える。
しかし通常の文脈においては、「自分の人生に深い影響を与えた人物」くらいの意味で使われることが多く、たとえば「オンラインサロンでタメになる話をしてくれた」程度であっても、その者を師匠呼ばわりする者は後を絶たない。
それがある界隈で名の通った人物であれば、自分の「バック」の大きさを示すことで虎の威を借ることができるからである。そうでなくとも、伝統芸能などに見られる師弟関係のイメージから、「特定の技能を有していること」を匂わせることができる。
あるいは、「師匠がいかに自分に影響を及ぼしたか」を語ることを通じて、自分の価値観を語ることを目的としている場合も少なくない。総じて「師匠」への言及は、権威主義の発露となる傾向にある。
なお、自然を師と仰ぐ者は何かしらの真理に目覚めてしまっている可能性が高いので、放っておくのが賢明である。

シズル感

高温で食材を調理している様子を表す英語の擬音語“sizzle”から派生した言葉であり、メディア上で食品などの魅力を演出する際にとりわけ有効な「五感に訴えてくる様子」を表す。「湯気」や「肉汁」といった視覚に訴えかけるポイントや、「鉄板で肉を焼く音」などが「シズル感のある表現」の代表例である。
メディア制作に携わる人間だけに使用が許された言葉であり、業界人であれば「シズル感」という言葉を自在に使いこなすことができるが、食品だけではなく「肌のツヤツヤ感」など臨場感やリアリティのある表現全般に用いられるようになっており、実際の意味はよくわからない。要するに、「シズル感が足りない」は「もっといい感じに」と実質的に同義である。

シナジー

相乗効果のこと。ビジネスシーンにおいて、「相乗効果」と言ってしまうと「具体的にどんな効果が?」と突っ込まれるような場面でも、「シナジー」と言っておけば「両方ともなんかいい感じになる」という漠然としたメリットを押し通すことができる。
この際、「シナジーってどういうこと?」とはなかなか指摘されない。カタカナ語の意味を知らない愚か者のように見られてしまうからである。
このように、ビジネスにおけるカタカナ語は、相手の「欧米社会へのコンプレックス」あるいは「無知を恥じる心」につけ込み、具体性に欠ける提案を押し通す際に有効に機能する。

自分時間

自分のための時間。仕事や家事などの拘束を受けない時間の使い方を指しているが、趣味やレジャーといった特定の目的に使われる時間は含まないものと解釈される傾向にある。「自分時間」はつねに「ひととき」でなくてはならず、カフェでリラックスしたり、お気に入りの家具や雑貨に囲まれながらティータイムを過ごしたり、ウォーキングの最中に空の青さに気づいたりと、「束縛のない世界が立ち現れる一瞬」に焦点をあてた概念となっている。こうした「ひととき」の発現は、「自分が身を置く世界がいかにすばらしいか」を主体に再認させ、搾取される日々を肯定する意義を持つことになる。
なお、「時間を有効に使う」という意味で、「朝活」と非常に親和性の高い概念である。

地元民が行く店

主に食を観光資源とする地方の飲食店のうち、観光客向けの集客施策を展開するものではなく、その地に住む人間から支持を獲得しているもの。とくに地元の食材を「日本一」と信じて止まない層から絶対的な信頼を寄せられている。その地を訪れた経験のある人間が「○○に行ったけど、あんまりご飯おいしくなかった~」などと宣おうものなら、「地元の人が行く店を選べなかったんだね」「それじゃ本当の●●を味わったことにはならない」など、光の速さで来訪者の落ち度を追及してくるので注意が必要である。

ジャストアイデア

会議などの場で、自身の発言内容が「ただ思いついただけもの」であることを示すために用いられる。つまり「ジャストアイデアですが」は、「ちゃんと検討したわけじゃないから、変なこと言っていても許してね」という意味になる。
これが一介の社員であれば、予防線を張る所作としてまだかわいげがあるのだが、影響力のある者の「ジャストアイデア」はときに無間地獄のようなブルシットジョブを生み出す。たとえば決まりかけていた企画案が、現場の状況を知らない上司の「ジャストアイデア」によって転覆させられる、といった事態は世に無数に存在しているのである。

少数精鋭

求人広告において、「業務に対して人が足りていない状況」を示唆する文言。マンパワーへの依存や、常態化した長時間労働について、事前に情報開示をしてくれている。つまるところ、求人広告でこの言葉を用いるのは極めて良心的なブラック企業だと言える。感謝しながらそっとスルーしよう。

シリコンバレー

アメリカ合衆国のサンフランシスコ州に位置する地域であり、AppleやGoogle、Facebookといった企業が拠点を置いていることから、世界を主導するIT技術が生み出される場として認識されている。
このイメージを利用して、国内のIT企業においても「シリコンバレー発の○○」といった形で自社の製品・サービスを権威づける傾向が見られるが、今や誰しも「シリコンバレー発のWeb検索技術」(Google検索)を使っているのであるから、中身のないアピールである。

ストーリー

物語のこと。近年、広告代理店界隈では、企業のブランディングにおける「ストーリーテリング」の重要性が高まっていると言われている。すなわち、商品やサービスそれ自体での差別化が難しいがゆえに、共感を呼ぶストーリーによってブランド価値を高めよう、というわけである。
物語の構造についての先行研究は数多く存在するはずだが、ストーリーテリングの重要性を謳う記事においては、それらを参照することが禁止されているのか、とにかく「共感が大切」「社会性が大切」など具体性のない方法論が並ぶ。
結果として、「差別化できない商品でも、なんとなくいい感じに売り出せばいい感じに売れる」という記事ばかりがヒットするのであるが、ともあれ「いい感じに売り出す仕事」は広告代理店が受注することになるので、曖昧なままの方がよいわけである。
「ブランドストーリー」や「ストーリーテリング」をめぐる記述から、私たちは資本主義社会の飽和状況をはっきりと読み取ることができるだろう。

誠意

物事に対して正直に向き合う心。通常、人間の心情は形として現れることがないが、「誠意」は金銭的・物質的価値として表現可能な数少ない心情である。
「これだけのことをしたのだから、誠意を見せてもらわないと」など、搾取や恐喝の体裁を整える際に用いられる。その他、クレームを入れる際に「相手に明確な落ち度はないが、腹の虫が治まらない」場合、「相手の誠意のなさ」に依拠した論理展開が見られるケースも多い。
総じて、相手の疚しさや良心につけこみ、金銭を引き出すための方法的概念として利用される言葉である。

成長

生物が育って成体に近づいたり、事業などの規模が大きくなること。
個人のビジネスキャリアが向上しているかどうか、を示す観点としてもしばしば取り入れられる。
「成長」の尺度は任意に変更可能であり、概ね自身の成功体験や困難を乗り越えた経験を振り返り、それを自らのサクセスストーリーのうちに意味づける際に用いられる。

前職

以前についていた職業や、以前の職場。
前職の経験を引き合いに出すことで、現在の組織のあり方を相対化し、異なる基準や視野を持ち込むと同時に、社会人としての見識の広さをアピールすることができる。

ソリューション

ある問題に対する解決の方法、方途のこと。コンサル系や広告代理店などでは、つねに最適なソリューションが提供され続けているが、施策の効果を比較できる顧客は限られているため、それが解決策として最善だったのかは謎に包まれている。
「ソリューション」にかかる修飾語としてもっぱら「最適」が用いられるのは、このように「最善」「最良」「最高」が保証しえないからである。

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